大分県内で長年建設業を営まれている社長様から、「そろそろ引退を考えているが、後継者がいない」「会社を丸ごと(あるいは事業の一部を)他社に譲渡したい」といったご相談が増えています。
建設業の事業承継や事業譲渡(M&A)は、他業種と比べて非常に特殊でハードルが高いと言われています。なぜなら、単に会社や資産を譲り渡すだけでなく、「建設業許可」という強力な資格をどう引き継ぐかが会社の命運を分けるからです。
今回は、建設会社の事業承継・事業譲渡を成功させるために絶対に知っておくべきポイントを、「許可」「法律」「営業」「税務」「雇用」の5つの観点からわかりやすく解説します。
1. 許可の観点:一番の壁!「事前認可」で許可を途切れさせない
かつては、会社を譲渡したり個人事業を代替わりしたりする場合、一度古い許可を「廃業」し、新しい会社(や新代表)で「新規申請」をし直す必要がありました。この間、無許可期間が発生し、500万円以上の工事ができなくなるという致命的な欠点がありました。
しかし法改正により、現在は事前に大分県の認可を受けることで、無許可期間を生じさせずに許可番号を引き継ぐ(承継する)ことが可能になっています。
【注意点】
-
事前申請の期限が厳格: 譲渡、合併、分割による認可申請は、譲渡等を行う日の少なくとも30日以上前に申請する必要があります。
-
公共工事(経審)の承継: 入札参加資格(経営事項審査の点数や実績など)も引き継ぐことを希望する場合は、さらに早く、少なくとも60日以上前に申請する必要があります。
-
相続の場合: 個人事業主がお亡くなりになった場合の相続認可申請は事後手続きとなり、建設業者の死亡後30日以内に申請を行う必要があります。
※「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」の要件を、引き継いだ後も満たし続けられるかの事前確認が極めて重要です。
2. 法律上の観点:スキームの選択(株式譲渡か事業譲渡か)
会社をどう引き継ぐかによって、法律上の手続きが全く異なります。
-
株式譲渡(会社ごと引き継ぐ): 会社の所有権(株式)だけが移るため、法人はそのまま存続します。許認可や契約関係もそのまま引き継ぎやすいのが特徴です。
-
事業譲渡(事業だけを切り売りする): 会社の「建設部門の資産と負債」だけを別の会社に売却する方法です。不要な負債(簿外債務など)を引き継ぐリスクを避けられますが、契約の巻き直しや資産の名義変更など、個別の手続きが非常に煩雑になります。
3. 営業上の観点:信用と「工事実績」の引き継ぎ
建設業は「信用第一」の世界です。経営者が変わることで、元請け業者や協力業者(下請け)、資材の仕入先との取引条件が悪化しないよう、丁寧な根回しと引き継ぎ期間が必要です。
また、公共工事の入札に参加する企業にとって、過去の「工事実績(売上)」は経営事項審査(経審)の点数に直結する重要な財産です。適切な「承継認可」の手続きを踏むことで、譲渡企業の過去の工事実績を、譲受企業(引き継いだ会社)の実績として合算させることができます。
4. 税務上の観点:多額の税金に注意!
事業承継・譲渡には、必ず「税金」の問題がついて回ります。
-
親族内承継の場合: 自社株を後継者(子どもなど)に譲る際、会社の業績が良いほど株価が高騰しており、多額の「相続税」や「贈与税」が発生して資金繰りを圧迫します。この場合、税金の支払いが猶予・免除される「事業承継税制」の活用を検討します。
-
第三者へのM&A(事業譲渡等)の場合: 事業譲渡によって得た利益には「法人税」が課税され、株式譲渡によって経営者個人が得た利益には「所得税等」が課税されます。どの手法を選ぶかで手元に残る現金が大きく変わります。
5. 雇用上の観点:技術者の流出は「許可取り消し」の危機
建設会社を買収・引き継ぐ最大の目的は「優秀な職人や技術者の確保」というケースが多いです。しかし、経営者が変わる不安から従業員が離職してしまうリスクがあります。
特に建設業においては、「専任技術者」や「経営業務の管理責任者」の要件を満たすキーマンが退職してしまうと、建設業許可そのものが維持できなくなる(廃業になる)という恐ろしい事態に直面します。従業員の処遇(給与や労働条件)をどう維持・改善するかのすり合わせと、安心させるための対話が不可欠です。
事業承継や事業譲渡は、思い立ってすぐにできるものではありません。特に「建設業許可の承継」を無傷で行うためには、数ヶ月〜数年前からの綿密なスケジューリングと、建設業法を熟知した専門家のサポートが必須となります。
「うちの会社、息子に継がせるか、どこかに譲るか迷っている」
「他の建設会社を買収したいが、許可はどう手続きすればいい?」
このようなお悩みがございましたら、まずは大分県建設業許可センターへご相談ください。御社にとって最適な引き継ぎの形を一緒に考え、サポートいたします。